ナタカさんらしくないタイトルの歌集『ドラマ』

 

ナタカさんの短歌は、うたの日やツイッターでお見かけするのですが、調べが柔らかくて、メタファーが効いていてとても好きです。今回、歌集を出されたということでさっそく取り寄せて読んでいます。

まず、わたしの好きな歌を見つけました。ネプリ配信されたことがある短歌です。

 

きみはもうやさしい人をやめなさい両手が水でいっぱいでしょう

(「Ⅳ」より)

水には温かさ、寂しさ両方のイメージがあって、それを包括している感じ。「水」という隠喩が誰の胸にもダイレクトに届いてしまいそう。特に頑張りすぎている人の心へと。

 

章ごとで見ると、今の雨の時期にぴったりなのは、「Ⅻ」かなと思います。

 

耳の奥深くへ届く雨音がやがて泉となるまでを待つ

 

これからのわたしの人生では、雨音が聞こえたら目を閉じて、耳の奥で泉をつくることが習慣となるに違いありません。この歌は五首目ですが、一から四首目までの滑り出しがとても良いです。

 

連作としていきいきとしているのは「Ⅺ」です。そこからわたしの好きな歌を。

 

これぜんぶティッシュペーパーだったらね、ティッシュの箱に詰めるねつつじ

 

「ね」がまるでつつじに語りかけるようで、咲き終わったつつじの花をやさしくいたわりながら集めているのだろうなと。箱のつつじがわらわら動き出しそう。

 

いちばんかわいい連作は、「羊の行進」です。読んだ人にはわかるよ。(めぇ)

うたの日に出された歌も二十首、日付順に並んでいます。厳選されたものなのだろうけど、こういう時系列の並び、日記みたいでいいよね。

歌集の名前の『ドラマ』、最初はナタカさんらしくないと思ったのですが、あとがきを読んで少し納得しました。自分のいる場所、現実は現実としてしっかりとしているのかどうかの危うさのような意味もあるのかもしれないな、というのは私見です。

最後の章は「約束」。四首しかないですし、ここからは引きません。ぜひ歌集を読んでみてね。BOOTHまたは葉ね文庫さんで購入できます。

 

 


執筆なう

うたつかい31号(短歌)、ねうねうvol.3(俳句)。

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