「ゆふぐれしづかに」島崎藤村 《8、6音の文語定型詩》

島崎藤村の詩といえば、有名なものとして「椰子の実」や「初恋」があります。これら文語定型詩は、7、5音で構成されており、叙情的に響きます。


「初恋」より抜粋
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり


「椰子の実」より抜粋
名も知らぬ遠き島より
流れ寄る椰子の實一つ



しかし次の詩は趣が異なり、8、6音の繰り返しです。内容が切ないのに、なぜか温かみを感じるような。



 ゆふぐれしづかに  島崎藤村



ゆふぐれしづかに
     ゆめみむとて
よのわづらひより
     しばしのがる


きみよりほかには
     しるものなき
花かげにゆきて
     こひを泣きぬ


すぎこしゆめぢを
     おもひみるに
こひこそつみなれ
     つみこそこひ


いのりもつとめも
     このつみゆゑ
たのしきそのへと
     われはゆかじ


なつかしき君と
     てをたづさへ
くらき冥府(よみ)まで
     かけりゆかむ



(「藤村詩抄」島崎藤村自選 1995年4月17日改版 より)

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