野口雨情「ぬばたま」を読んで

「ぬばたま」   野口雨情

 昨日は君を
 かへりみで
 雲の山路も
 こえました
 すげなき曲の
 たまだれの
 雨に泣くかよ
 きりぎりす(雨)


 それでも君は
 久方の
 雲井にちかき
 花乙女
 それでは君は
 ぬばたまの
 あやもわかぬ
 はな乙女(野)


※すげなき曲……「すげなきたま」と読む

野口雨情といえば「シャボン玉」、「青い眼の人形」、「赤い靴」などの童謡で有名です。童謡にもかかわらず、詩の内容は悲しみに満ちていることも多く。著作権の保護期間が過ぎている詩人なので、ネット上では青空文庫で読めますし、kindleで0円で読めるものもあるようです。

後期は童謡的な作品が多いのですが、初期は「ぬばたま」のような、叙情的な大人テイストの耽美的なものがあるようです。

「ぬばたま」を読んで。作品の「(雨)」と「(野)」より考察。「雨」と「野」は、野口雨情の名前の一部でありながら、前日に出会った後の「雨」は女性、「野」は男性を表し、連歌的な詩のやりとりをしている。

*女性から男性に贈られた詩

> 昨日は君を
> かへりみで

昨日はあなたを振り返りもしないで

> 雲の山路も
> こえました

雲の山の道のようにはるかに感じられる道を帰りました。

> すげなき曲の
> たまだれの
> 雨に泣くかよ
> きりぎりす(雨)

素っ気ない、まるであなたのような曲(「たま」と読ませることで「たまだれ」に続かせる)、雫の雨に泣くきりぎりすのような哀れな私。

*それに応え、男性から女性に贈られた詩

> それでも君は
> 久方の
> 雲井にちかき
> 花乙女

濡れきりぎりすのようでも君は、雲に近い天女のような花の乙女。

> それでは君は
> ぬばたまの
> あやもわかぬ
> はな乙女(野)

しかしそんな様子では、暗く沈み、君から離れていく私の気持ちを理解できない、華々しいだけの乙女だ。

(アイキャッチ画像:写真…にゃむ 加工…とよよん)

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