クリオネ記

冷蔵庫で飼っているクリオネ。冷蔵庫を開けるときはノックし、「お邪魔します」と声をかけつつ開ける。今日は急に扉を開けたものだから、一匹がちょうどバッカルコーン中で、オレンジの触手が4本、頭から出ていた。それらを慌てて引っ込めヒレをひらひら、ごまかしていた。「失礼しました」

けさ冷蔵庫から出したとき。3匹全員で死んだフリイナバウアー。このあとゆらゆら泳ぎだす。朝いちばんに冷蔵庫を開けるとイナバウアーやまん丸になっているので、開け閉めしないと暗いから眠っているのかも

●冷蔵庫●クリオネの瓶のまえ●シュークリームを置いてみた●クリオネは天使●天使に●自慢した●いいでしょう●わたし●シュークリーム●たべられます●てんし●シュークリーム●たべられません●わたし●は●てんし●を●たべる●こ●と●だって●で●き●る

クリオネは流氷につき
海辺に流れ着いていた
ひろって冷蔵庫で飼う
もう一ヶ月生きている

からだは透明
命の証はあけすけで
ハートの形をしている
羽のようなひれ
お化けのように足がなく
顔は赤
頭に角を二本立て
天使なのか お化けなのか 鬼なのか
わからないようすでひらひらおよぐ

何も食べずに
もう一ヶ月生きている
ときどき瓶の底でじっとして
死にながら
命の火を少しずつ燃やす
氷の下は寒すぎてえさがほとんどないのだろう
それでも生きていける体をもっているのだろう
赤いハートを少しずつ燃やしながら
もう一ヶ月生きている

目がないから
明るさはからだ全体で感じるのかな
冷蔵庫の小瓶が自分の部屋
私が開けると電気が点く

👼

ずいぶん暖かくなり、冷蔵庫の温度が上がったのか、
うちに来て二ヶ月経つ瓶のなかのクリオネたちは、みんなそろって元気がない。
イナバウアーもしなくなった。
底に横たわり死んでいる時間が増えた。

実際、一匹、死んでしまったようだ。ちいさく縮んでいる。
クリオネは死ぬと小さくなったり丸くなったりして、
最後は、消えてなくなってしまうそうだ。

生と死の境をゆらゆら揺れ続ける
クリオネたちの輪郭はあいまいだ。
明日は溶けてなくなるかもしれない。

冷蔵庫を開けたら天使のいない、
海水だけの瓶になっているかもしれないのだ。

 

One thought on “クリオネ記

  • 2016-04-20 at 4:47 PM
    Permalink
    天使のマーク以降の詩文を追加しました。 Reply

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